開発ストーリーアルミ/樹脂直接接合

金屬と樹脂など異なる素材を、従來の接著剤やネジを用いずに接合する昭和電工の「アルミ/樹脂直接接合」。硬化までに時間がかかる接著剤を用いた接合法の課題を解決し、さらに、これまで直接接合では実用化が困難とされてきた金屬とポリカーボネート(以下、ポリカ)の接合にも成功しました。

アルミ/樹脂直接接合
開発のきっかけを教えてください。

自動車やスマートフォン、電気製品など、日常的に使っている製品の多くは、異なる素材を組み合わせて作られています。従來、それらの素材はネジ止めや接著剤などで接合されていましたが、部品の軽量化や小型化のニーズが高まる中、近年、素材同士を直接貼り合わせる直接接合法が注目を集めています。

現在、接合法の主流は接著剤によるものですが、これには常溫での硬化に長時間を要す(數日間かかるケースもある)という問題があります。硬化時間を短縮するために溫度を上げれば、夏場に鉄道のレールが伸びるように、素材の寸法が変化します。冷めた後は元の大きさに戻りますが、マルチマテリアル製品の場合、素材によって線膨張係數が異なるため、変形を起こしたり、接著の強度や信頼性に影響が出たりする恐れがあります。

ほかにも接著剤は可使時間の制約がある、場合によっては低溫環境での保管が必要など、接著剤接合には多くの制約があります。これらの制約は手間や時間をかければクリアできますが、そのぶんの手間や時間はコストです。昭和電工では、コストをかけず、より早く製品を世の中に屆けられるようにするため、「直接接合」を突き詰めることにしたのです。

どのような方向性で開発を進めることにしたのでしょうか?

一般的な直接接合は、金屬の表面にあらかじめ微細な凹凸を形成し、そこに加熱した樹脂を流して物理的に接合させます。しかし、粘度が高い材料は細かな凹凸にしっかりと入りこまず、接合後の強度が弱いという欠點があります。

自動車のヘッドランプやスマートフォンなど、たくさんの製品に使われ、知名度が高いポリカも、この高粘度な樹脂の1つ。これまで直接接合で高い強度を得た成功例はありません。しかし、多くの人々の生活を支えている素材だからこそ、直接接合への潛在的ニーズは大きいはず。世の中に対して大きなインパクトを與えられると考え、ポリカの直接接合を実現させるべく、開発を始めました。

開発の様子を振り返っていただけますか?

開発當初、昭和電工では、アルミニウム(以下、アルミ)製品の耐食性向上を目的とした樹脂コーティングの技術開発に取り組んでおり、実用化へ一定のめどを付けたところでした。本來、アルミと樹脂の接著は難しいのですが、このコーティング技術では化學結合により強固な接合が実現できたため、この技術が異材接合につながると考えました。

直接接合を実現するプライマーとして、まず當社製品である熱硬化性樹脂との接合に取り組みました。そこでの良好な結果に自信を得た私たちは、ポリカについても、その構造を前提にアルミとの接合を考えたのです。しかし、熱硬化性樹脂のときと同じプライマーを塗工しても、まったく接著しません。金型を開けた瞬間、材料がチャリンと落ちるのを見たときは、目の前が真っ白になりました。プライマーの配合を変えて70パターン試しましたが、1つも接合できなかったのです。

長年、熱硬化性樹脂の研究に取り組んできた私たちは、熱硬化性樹脂の理論を他の樹脂にも展開しようとしていたのですが、何度も失敗を重ね、今回はまったく違う構造にすべきだと判斷。そして、プライマーを特殊な構造とすることでアルミと化學結合させながら、ポリカとは分子拡散を活用すれば強度のある層ができるという仮説を立てました。

この発想の転換が功を奏し、數回の試作の末、解決の糸口を見つけることができました。長い間、世界中で誰も接合できなかった素材を接合する解決策を発見したときは、本當にうれしいものでした。

どのようなことが問題の打開につながったのですか?

金屬とポリカの直接接合については、多くの企業で研究が進められていますが、その大半は金屬側の表面処理をどうするかに集中しているように見受けられます。當社の場合、アルミと樹脂の雙方にビジネスを持っています。そのため、金屬側と樹脂側の接著部の構造をどのように橋渡しすると接合できるか、という議論が社內でできる環境があったのです。

そして、研究者たちが日頃からさまざまな知識を吸収し、開発のヒントを探しています。分子拡散というアイデアは、本來の研究分野ではないものの、研究者が常日頃からさまざまな分野の研究成果や講演で知識を吸収していたからこそ発想できたことでした。こうしたことが、異なる切り口を見つけられた大きな要因となったのです。

開発した「アルミ/樹脂直接接合」の特長を教えてください。

本技術では、被接合樹脂用に最適化されたプライマーで接合強度を得ます。そのため、ポリカのような溶融時の粘度が高い樹脂材や、逆に粘度が低い結晶性のPBT樹脂やナイロンでも接合が可能です。また、接著剤でも接合しづらい無極性のポリプロピレンであっても、実用強度を得られるレベルでの接合を実現します。

接著剤接合のような中間材の保管にかかる手間も大幅に削減でき、製造工程の圧縮とコスト削減も実現いただけると考えます。

今後の開発予定について教えてください。

現在、従來接合が難しいとされていた、さまざまな樹脂の直接接合にトライしています。
當社では、有機?無機?アルミに至る幅広い技術?製品を有した研究開発部隊が有機的に連攜しています。お客様のニーズをヒアリングしながら、新たな開発にも取り組んでいきます。

前川 浩志

戦略企畫部
コーポレートマーケティング室

直接接合プロジェクトマネージャー

前川 浩志
東村 英彥

戦略企畫部
コーポレートマーケティング室

室長

東村 英彥
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